シャドウアップ™︎とは

新しい3Dアニメーションメディア

本プロジェクトでは、オリジナルのステレオライトシステムにより、「影」を主体とする斬新な3Dアニメーションメディアをつくる。このシステムでは、観客が装着する3Dメガネのレンズの開閉と同期して2つのライトが交互に発光し、左右の目にそれぞれ別光源から生じる形状差のある影が見えるため、それらが脳の空間認識機能によって結像して一つの立体として知覚される。この立体化の効果は影に限らず、透過光や屈折光、反射光からなる模様であっても成立する。  重要なのは、これらがCGを使用しないアナログ表現であることである。本システムでは現象をデジタライズせず、解像度やフレームレートが無限の3Dアニメーションを無遅延で空間に生み出す。我々が提案したシステムは、アナグリフや偏光を用いた他の方式の3Dグラスと比べ、環境の光学特性の自由度が非常に高く応用範囲が広い。

現場での視覚体験価値の再考

本プロジェクトのモチベーションの一つは、現場での映像体験が「確認作業」と化すことへの危惧である。SNSの普及により、ほとんどの視覚体験は写真や動画を通じて事前に共有されるようになった。これにリアルな空間での新たな知覚の驚きや発見の要素が軽視されていることへの危惧がある。本プロジェクトは「現場でしか感じられない」アートの価値を再考するものである。これは単に「撮影禁止にする」といった消極的な手法ではなく、技術や表現自体が映像として記録・再現できないことによる性質である点が現地鑑賞の意義を本質的に高めている。

純粋な知的好奇心による探求

もう一つのモチベーションは、3Dアニメーションに対する純粋な知的好奇心である。ステレオスコープの発明以来、3D視覚体験は技術革新とともに発展してきたが、日常におけるメインメディアにはならなかった。その理由は、3Dが知的好奇心を満たす純粋なツールでありながら、情報伝達手段としての利便性に欠けるからである。1838年、ステレオスコープを発明したチャールズ・ウィートストンの興味は、「なぜ人間の目は二つあるのか?」という根源的な疑問から視覚の仕組みを解明することにあり、視覚を拡張することで「新しい世界の見え方」を提供することだった。本作品も同様の興味に基づくものであり、このメディアは情報伝達ではなく好奇心の刺激を目的としている。それがゆえにオブジェ自体に特定のメッセージ性を持たせておらず、シナリオも存在しない。コンクリートブロック、ネット、水、ミラーボールといった素材は単なる物質として存在し、それらが作り出す文様の立体視の成立が手段であり目的なのである。こうしたミニマルなアニメーションの探求が本作品の核心であり、3D技術がメインメディアにはならずとも、純粋な知的好奇心により長く残り続けてきた理由と共鳴している。

空間と知覚の拡張

本プロジェクトは、拡張した影絵を作り出すアニメーション装置であると同時に、人間の知覚そのものを拡張する装置でもある。アナログな仕組みで作られるゼロ遅延の立体映像体験は、計算機によるインタラクティブ作品とも質の異なる、まるで物理法則が変わった異空間に入り込んだような特別な体験を作り出す。これがShadow Up™プロジェクトである。

3分間 概要&解説動画(英語)

https://www.youtube.com/watch?v=szlU-cc00a4


ステレオライト™︎システム

機材構成

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ステレオライト™︎システムは以下の3つの機材により構成される。